東京なら新橋、札幌ならススキノ、仙台なら国分町、福島なら置賜町(おきたまちょう)、秋田なら川反(かわばた)…全国津々浦々に、名を馳せる飲み屋街がある。
さて、わが町石巻は…。ここで言葉に詰まってしまう。小柳町(こやなぎちょう)か、寿町(ことぶきちょう)か、立町(たちまち)か。個人的には小柳町と言いたいが、昔の呼び方で今はお年寄りかタクシー運転手しか使わないだろう。隣の寿町のほうは商店会や通りの名前にもなっているし、スナックビルが立ち並び(津波のダメージも比較的小さかった)、飲み屋街として映(バ)エルのは寿町のほうだ。
昔は駅寄り、羽黒山階段下の小柳町が中心だったが、古い建物が多く津波で打撃を受けて更地化した。わが山小屋もこの小柳町に属する。斜向かいのスナックおり姫ママは、タクシーを呼ぶときに「小柳町の」を必ず付ける。そうすると「マルシン側ですか、六文銭側ですか」と来る。古井戸のある横丁のどちら側に車を着けますか?という意味だ。
小柳町も寿町も、正式な町名ではない。住所は「立町」である。はやしやホテルの北側、かつてはアーケードがあり多くのショップが軒を連ね、川開きのパレードが行われる石巻の目抜き通りが「立町通り」だが、今はシャッター通りとなり、買い物客はインターチェンジ近くのイオン周辺に奪われてしまった。
石巻の立町は仙台でいえば一番町であり、一本裏通りにある国分町に当たるのが、小柳町であり寿町なのだ。仙台のような大都市と比較しても仕方ないのだが(一番町も国分町も正式な町名である)。
山小屋の住所は立町だが、「どこにありますか」と訊かれたら「小柳町です」と答えたい。「では小柳町はどこですか?」と訊かれたら「寿町と羽黒町の間、寿福寺の北側一帯です」と答えよう。もう一度、小柳町を石巻最大の歓楽街として認識してもらえるように、微力を尽くしたい。
(震災前の寿町界隈)