港町の山小屋だより

2021年5月、被災地石巻に焼酎と洋楽を楽しむBAR「山小屋」がオープン。東京でサラリーマンをしながら毎週末に石巻に帰ってバーを開く生活を続けて2年。そして2023年4月、37年ぶりに石巻にUターン。昼間の事務職とバー経営の二足のワラジを履くオーナーYがゆるーく情報発信しています。

5/1(土) オープン当日に震度5強

なんとも不吉な船出となりました。朝買い出しをしていたらグラグラと揺れ出し、棚の商品がガチャガチャ、スマホはピューピュー、買い物カゴを置いて店の外へ飛び出しました。宮城北部震度5強。小さな子供がこわいこわいと泣いていました。スマホで情報を探して「津波の心配なし」の言葉に安堵。石巻では、大きな地震津波、10年前の記憶が蘇るのです。津波さえ来なければすぐに日常に回帰。地震に慣れているのです。この町で店をやることの無謀を再認識しました。

商品が棚から落ちたらしく店は閉まってしまい買い物ができなくなりました。店はどうなってるのか?とハッと思い至り、買い物している場合じゃないと立町まで戻りました。メールやLINEがじゃんじゃん鳴ります。みんな心配してくれるのですが返事どころではありません。幸い店はワイングラスが1個割れた程度でした。もう少し棚のサンを上げたほうがよいですね。あと下の棚裏から倒れた角材で卵が割れていました。昨日カウンターに所狭しと並べた焼酎一升瓶が倒れてなかったので安心しました。もちろんすぐ下ろしました。「またでかいのが来る」という前提で店をやるべきですね。それにしてもなぜ土曜日に? これで3回連続です。


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そのまま店を片づけていると雨が降ってきました。朝はあんなに天気がよかったのに。そこへ仙台から叔母が訪ねてきてくれました。お祝いに絵を持ってきてくれました。石巻の中瀬を日和山から見た風景画は、僕の亡母が末妹(叔母)の新築祝い(1979年頃)にあげたものです。描いてもらった方は私の高校美術部の恩師H先生。オイルで艶消しした絵肌はH先生ならでは。この絵を山小屋のシンボルにしたいと思います。

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朝の地震で、東京から助っ人に来てくれることになっていた友人の来石がキャンセルになりました。新幹線が運転見合わせになったようです。お客のほうでも2人ほどキャンセル。この地震と雨では仕方ありません。15時に友人Nさんが手伝いにきてくれました。時間に余裕のある時は彼女にスタッフに入ってくれるよう頼んでいます。17時に4名予約が入っているので二人で掃除と片づけ。午前中に行くはずだった買い物に行けず、なんとも心細い開店です。

17時オープン。小学校の同級生が来てくれました。閉店までいてくれました。僕はカウンターにいたので昔話に参加できなかったのが悔しいです。18時に近所の店のママさんが、19時に高校先輩が来てくれました。H先輩は、実はこの店を一緒にやりませんかと相談した方。地元新聞社にUターン再就職が決まり立ち消えになりましたが、店を気に入ってくれたようで常連第一号でしょうか。


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酒づくり見よう見まねでなんとかなりましたがジントニックの注文があった時は、バーテンダーの経験がある同級生に教えを請いました。「ライムは8等分。筋を落としカットを入れてグラスに刺す。あとはマドラーを付ければ客がやってくれるよ」。なるほど。東京のバーで何杯も飲んでいますが作るとなると別物。勉強になりました。「あとジンやウオッカは冷凍庫のほうがいい。棚にある瓶で作ろうとしたらキャンセルされることがある」と。へー、凍らすのは知ってたけれど。でも山小屋風情でそこまでやりますかね(笑)。ご容赦ください。

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昨日仕込んだおくずかけを出したのですが「うまいけれどとろみがない」と叱られました。おくずは葛のこと。実際は片栗粉なのですが地震で買えなかったのです。明日こそトロミをつけたおくずかけを出します。

スタッフのNさんは翌日仕事なので早上がり。みんな帰ったあとの片づけや食器洗い、内装続きなどで店を出たのは午前1時。シャッターを下ろしたとたんら腹がグーとなりました。夕飯を食べる暇などありませんでした。アパート近くのすき家に飛び込んで牛丼を食べて帰りました。

あれこれ感想を書きたいですが、うまく書けません。出来事を書くことで精一杯です。今日もこれから買い出し、スマホを触っている時間が惜しいほど忙しいです。でもこれがやりたかったのです。郷里石巻で。地震とコロナに怯えながらではありますが、まずは船出成功。不束者の店主ではありますが温かい眼差しで見守ってやってください。明日もよろしくお願いします。