港町の山小屋だより

2021年5月、被災地石巻に焼酎と洋楽を楽しむBAR「山小屋」がオープン。東京在住(石巻出身)オーナーYがゆるーく情報発信しています。

6/19(土) 聖火が町にやってきた

1週間ほど前だったか、中学同期のK子からLINEが来ていた(似た書き出しばかりでご容赦)。

「来週の土曜日、石巻さ来んのすか? うちの旦那、走るってよ」

ああ、聖火のことか。もうそんな時期。ほかの地域では公道リレーを断念するとか、とてもじゃないがオリンピックを寿ぐ雰囲気ではないが、石巻は震災復興をアピールする目的もあるので決行するようだ。誰がそのランナー(K子のつれあい)なのかは書かないけれど、遺族として万感の思いを胸に走るのだ。ぜひ頑張ってほしい。もう一人、町の有名人が走るが、数日前に悪口を書いたばかりなのでここでは書かない。

この日は聖火が15時半に駅を出発するというので13時から2時間限定で店を開けたが誰もこなかった。警官のピーピーという笛の音ばかりが聞こえていた。ランナーが走る立町通りは店から100mもないのでよく聞こえる。交通規制が敷かれていて客が来るわけがない。


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15時に店を閉め、駅前でK子と待ち合わせて一緒にスタートを見た。K子たちはランナーを追いかけていったが、傘をさしてのんびり街中を散歩した。かわまちから中瀬に渡った。つい数か月前に架かったばかりの新内海橋(河口側。正式には何という名前だろう?)を初めて渡った。げんき市場から萬画館に直接アクセスできる感覚だ。


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まちの本棚に立ち寄り店長と世間話をして店に戻った。暇なのでキッチンの水道を修理した。ヤフオクで買ってあった中古蛇口(フレキシブルパイプ+レバー式×2ヶ所)をとりつけた。レバー式は楽でよい。東京の飲食店は今後レバー式でないと認可されないと聞いた。衛生面なのかバリアフリーなのか。外して余ったレバー式蛇口はトイレの手洗いに移設。これで水回りはほぼ完成。


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夜も暇だった。9時くらいになり今日もゼロかなぁと思ったらドアが開いた。顔を見て驚いた。東京でよく行くスナックRのSちゃん。えーーー、石巻まで?

「うん来ちゃった。やっぱり一度は見とかないとね」

ひえー。でもうれしい。ずっとLINEで相談に乗ってもらってた。店の改装過程も写メを送って報告していた。

「すごいね。これ全部一人でやったの? がんばったね」

思えばRやその階下Jに通うのが楽しくて、俺もこんな楽しい空間を石巻に作りたいと考えたのだった。同じビルでオーナー同士が仲良くやっている店に客として入り、混んできたら隣の店に移動したりまた戻ったりが楽しい。店によって客層が微妙に変わる(ママのキャラクター次第)のでいろんな人と出会える。

だからはっぴいえんどの下にした。客層は違えど、お互いに紹介しあって店と客のコミュニティを作りたかった。隣のBUGも斜め上のGAIN SONGも、斜向かいのおり姫もみんな気持ちのいい店主。向かいのスナックWさんのママとだけは仲良くなれないけれど(笑)。

Sちゃんは地方に行って一人でスナックめぐりをしたい人だから邪魔するのは不本意だけれど、石巻まで来てくれたのに一緒に行かないわけには行かない。下手な店に行かれて気分を悪くされたくない。

「このあとできれば俺も一緒に…」

「え? うーん…まぁいいか。出れるの?」

「閉める! もう来ないよ」

てな感じでシャッターを下ろして二人で聖火リレー、いやハシゴ酒。楽しかった。行ったことのない不思議なスナックにSちゃんが惹かれて突撃したら歓待され、ここも楽しめた。

「私こういうの外さないのよ」

さすがー。ホテルに帰る別れ際に「明日の午前に石巻を案内しようか?」と誘ったがチェックアウトぎりぎりまで寝ていたいとのこと。お互い翌日に東京に戻るのだが別行動となった。

東京の人が石巻に来ると、市内を案内したくてたまらない。どこをどう回ればいいか、何を見れば石巻に来たことになるのか、わからない人が多いからだ。でもそれは大きなお世話。その人なりに見たいものを見ればよい。何を見てどう感じるかは個人の自由(そもそも石巻に来たら日和山に登らなきゃいけない道理もない)。どうも俺はそこらへんを強制したがる癖がある。「俺の町を勝手に回るな」とばかりに。自意識過剰なのだ。

聖火リレーも、最初はそう思った。でも、今日一緒に町を歩いて、テレビカメラや報道カメラが町中くまなく撮影して、石巻の復興した姿を世界に届けたことだろう。それはそれでよいこと。ただ、もっとほかに見せたかった場所がある。門脇や南浜や大川を走ってもよかった。なかなかそうはいかない。

Sちゃん、来てくれてありがとうね。東京のたみんなに、俺は元気に山小屋をやっているよと伝えてください。