港町の山小屋だより

2021年5月、被災地石巻に焼酎と洋楽を楽しむBAR「山小屋」がオープン。東京でサラリーマンをしながら毎週末に石巻に帰ってバーを開く生活を続けて2年。そして2023年4月、37年ぶりに石巻にUターン。昼間の事務職とバー経営の二足のワラジを履くオーナーYがゆるーく情報発信しています。

10/2(土) 古書店兼業カフェの試み

3度目の出店となる石巻一箱古本市、つつがなく終了。予想に反して開店直後(11時〜)から来客がひっきりなし。メインエリアから離れてはいるが、駅に近いので「ここが最初です」という人が多かった。事前に束見本販売を宣伝したのも奏功したかも。束見本だけ買っていく客が多かった。これは売れないだろうなという本から売れていったのも面白かった。逆も然り。そういうところが面白い。

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前日に石巻入り。久々に新幹線で、台風とともに北上してきた。20:30店着。若いカップルが来てくれた。インスタフォロワーさんらしい。こんな天気にありがたい。東京駅で買った築地だし巻き卵、イカにんじんを出したら喜ばれた。その後は客は来ず、閉店まで古本市の準備。翌朝、まちの本棚に寄って出店料を払い、ノボリをもらって店へ。テーブルを表に出し、本を詰めた折りたたみコンテナをそのままボンと載せた。これが一箱流。

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午前の客は初めての人ばかり。

石巻に長年住んでるけど、こんな通りがあるなんて知らなかったよ」

「店は週末限定なのすか? んで今度来てみっから」

と古井戸通りと店をアピールできた。前日に仕込んでおいたアイスコーヒーをサービスで出したらどんどん出る。台風一過で汗ばむほどの陽気だ。本の会計の合間に上野謹製フレンチロースト豆を何度も挽き、コーヒーを何度も淹れる。終始こんな調子だった。

昼過ぎからは知った顔がチラホラ。向かいのおり姫ママ、品川屋ビルのエスポワールママ、もぐもぐのリサちゃん、松ばるのトモヤ君が来てくれた。同級生も多数。初めて会う石巻中出身の同期Iさんとは初対面。水彩画を描いていてパースを勉強したいと相談を受けたがそういう古書は見当たらず。スマホで見せてもらったがとてもよい。水彩のマスキングという技法は初めて知ったが光を表現するのに適している。市の美術展に出品するらしい。頑張ってほしい。

その後も街づくり研究、フランス文化研究といった大学の先生方がご来店。この古本イベントはいろんな学究に見守られている。15時過ぎにようやく落ち着き、その街づくり専門M先生に店番を任せてノボリを返却しに出た。腹がグーと鳴った。昼飯を食う時間がなかった。もりやでカツカレー蕎麦。茶蕎麦だったのね。

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店に戻って先生と交代。テーブルに名刺が置いてあった。東京のラジオ局の人。震災後、ボランティアや復興支援でよく来ているのは知っていたが面識がなかった。俺が91年に新卒で入った会社だ。話したかったなー。もう少し早く来てくれればよかったのに。

16時、誰もいなくなった。やっと休憩できると表のコンテナを片づけていたら仙台の従姉Y子が現れた。「来ちゃった。寄っていい?」。はいはい、どうぞ(内心深いため息)。そこへ「山小屋さーん」と呼ぶ声。古井戸のあたりで同級生S子の娘が手をふっている。母親と一緒に古本市に出店していたのだ。「コーヒー飲ませてくださーい」。やれやれ、休憩もできない。

客がいなくなったのは17時半。開店から6時間超。さすがにバテた。カフェタイムと古書販売を同時にやるのは無謀だったが、お客さん同士の交流が生まれ面白い効果があった。山小屋で「わー久しぶり」と顔なじみとバッタリ出会うことが多かったよう。古本市と山小屋との客層がぴたっとマッチした。

コーヒーをサービスしつつ店の名刺を渡し、ぜひ今度はお酒でも飲みに来てくださいと宣伝した。店の中も興味深げに見学していく。こういう場末の店に入ることに慣れていないのだろう。少しでもハードルを低くしたいところ。

そういえば偶然の出会いがあった。若い女性が本を一冊抱えて店内に入り、劇団どくんごのポスターを見て「ご存じなんですか?」と訊いてくる。兄貴がいたんですと言うと「私、Yの娘です」と。えー! 門脇の3軒隣のお米屋さんの? Yさんは兄貴の幼なじみで劇団がテントを張る場所の使用許可やチケット販売などをやってくれていた恩人だ。まさか娘さんと会えるとは。「ここ安いですね。今度お邪魔します」。これは楽しみ。昔話がいろいろできる。

今日、出会った人たちの顔を思い浮かべながらソファーベッドで横になった。

※夜は夜で大騒ぎだったが、長くなるのでいったん切る