港町の山小屋だより

2021年5月、被災地石巻に焼酎と洋楽を楽しむBAR「山小屋」がオープン。東京でサラリーマンをしながら毎週末に石巻に帰ってバーを開く生活を続けて2年。そして2023年4月、37年ぶりに石巻にUターン。昼間の事務職とバー経営の二足のワラジを履くオーナーYがゆるーく情報発信しています。

久々に雑誌「ストレンジデイズ」を読みました。

ストレンジデイズ 2007年 10月号 [雑誌]

ストレンジデイズ 2007年 10月号 [雑誌]

米シンガーソングライターNILSSONが第一特集で、漫画家の浦沢直樹氏によれば、生涯「ダメ男」だったNILSSONがわかるようになるには相応の年季が要るとのことで、そう言われると聴かずにおれません(笑)。ほかにも、親友のJOHN LENNONが銃で撃たれたのを機に80年以降は銃規制運動に力を注いだ逸話とか、ちょっといい話も聞けました。NILSSONやRANDY NEWMANは、いつかちゃんと聴いてみたいと思っているのですが、なかなか…。
ランディ・ニューマンを歌う

ランディ・ニューマンを歌う

中特集は「ブリティッシュジャズロック」で、これが購入の目的でした。ジャズロックは一見狭いジャンルと思われるかもしれませんが、その広大さ/奥深さはハンパではなく、知れば知るほど深みにはまってしまいます。私見では、ブリティッシュジャズロック(以下BJR)は大きく4つのカテゴリーに分かれます。

  1. 生粋のジャズ系ミュージシャンがロック的なアプローチを試みたもの
    SHADES OF BLUE / DUSK FIRE

    SHADES OF BLUE / DUSK FIRE

  2. R&B系(あるいはトラッド系)ミュージシャンがジャズ寄りのサウンドを追求したもの
    ア・ニュー・ジェネレーション・オブ・ブルース(紙ジャケット仕様)

    ア・ニュー・ジェネレーション・オブ・ブルース(紙ジャケット仕様)

  3. (上記2パターンを純正ジャズロックと位置づけた上で)1970年以後アートロックの先鋭化=頭打ちに伴い派生した「ジャズロック風」のもの
    Chapter Three Vol.2

    Chapter Three Vol.2

  4. さらにもう一つ、上記三派とは別にBJRの一大流派を形成したカンタベリー派を忘れてはいけません。
    Third (紙ジャケット仕様)

    Third (紙ジャケット仕様)

今回の特集は「1」と「2」に限定しています。また「ブリティッシュ」と銘打ったのは、MILES DAVISやRETURN TO FOREVERが自動的に除外され、ロック企画に専念できるからでしょうか。この「1〜4」を一括りにしたところで、それぞれがクロスオーバーしにくい独自の音楽性を構築しているので厄介です。僕はやはりブリティッシュブルーズとも密接な関係を持つ「2」が一番好きですね。「1」「4」も嫌いではないですが、ややインテリぶっている感じがします。
仮に「BJRを代表するバンドは何か」と問われれば、僕は迷わずCOLOSSEUMを挙げます。

Valentyne Suite

Valentyne Suite

もともと「1」に属するジャズドラマーのJON HISEMANが、GRAHAM BONDやJOHN MAYALLのR&Bバンドを経て、68年に結成した自身のバンドです(初期のバンド名はJON HISEMAN'S COLOSSEUM)。個々の演奏技術はもちろん、楽曲の芸術性、音楽的志向の多様性、何をとっても最高レベルです。68年といえばCREAMの全盛期であり、FREEやLED ZEPPELINがデビューした年ですが、ロックバンドとしての風格は彼らを凌駕するほどで、アルバム発表ごとに新境地を切り開いています(「1〜3」を縦走した稀有なバンドと言えます)。今年の2月にファン念願の初来日を果たしました。http://clubcitta.co.jp/001/progcitta/colosseum.html川崎クラブチッタでのライブは、それはそれは素晴らしいものでした(別の機会に書きます)。
さて「3」の立場がやや苦しいですが、実は割と好きなんですよ。キャッチーなところもあるし間口も広いし、一番とっつきやすいと思います。「3」からBJRに入門し、「2」→「1」と辿っていくのがいいかもしれません。オススメ(ちょっぴりディープ)をいくつか。
Ginger Baker's Air Force

Ginger Baker's Air Force

BLIND FAITH解散後、ERIC CLAPTONと袂を分かったGINGER BAKERSTEVE WINWOOD、その他大勢によって結成されたジャズロックユニット。GINGERのアフロ志向がすでに顕著。
エマージェンシー999

エマージェンシー999

MODSの文脈で語られることが多いですが、リーダーのALAN BOWNは映画音楽作曲家JOHN BARRYの元でジャズを学んだ人。ホーンを前面にフィーチャーしたジャジーサウンドは、ロックサイドの面目躍如の感あり。
Bad Words & Evil People: Transatlant

Bad Words & Evil People: Transatlant

15年前に渋谷のQUATROでジャケ買いをして大正解。その渋い演奏が気に入り、手に入るCDはほとんど買ったのですが、日本語で書かれた資料がなく今もって謎のバンド(英文を読めばいいのですが)。細密な網目のようなBJR人脈図の中で孤立しているのもその一因か。もうちょっと調べてみます。
Spirit of John Morgan

Spirit of John Morgan

91年に某FM局のレコード室でその存在を知りました。JOHN MORGANはジャズクラブなどで活動していたオルガニスト/ピアニストですが、60年代末に自身のバンドを結成、ポップ性に富むアルバムを何枚か制作しました。今度エアーメイルから紙ジャケが出るようですね。http://airmailrecordings.com/cult05.html
ストリート・ノイズ(紙ジャケット仕様)

ストリート・ノイズ(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: ブライアン・オーガー・アンド・ザ・トリニティ
  • 出版社/メーカー: WHDエンタテインメント
  • 発売日: 2006/04/21
  • メディア: CD
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このBRIAN AUGERも「2」寄りの人ですが、疾走するようなオルガンが60年代のMODSたちに受けるなど、ロックサイドで高く評価されています。このアルバムはのちにKEITH TIPPET(ex.KING CRIMSON)の奥さんになるJULIE DRISCOLLと組んだ前衛ジャズロックが満載。BRIANは96年にERIC BURDONのサポートで来日、九段会館の熱い演奏が忘れられません。そしてこの2月には再来日を果たし、70歳近いとは思えないパワフルな演奏を見せてくれました(涙)。これもいつか書きます。