港町の山小屋だより

2021年5月、被災地石巻に焼酎と洋楽を楽しむBAR「山小屋」がオープン。東京でサラリーマンをしながら毎週末に石巻に帰ってバーを開く生活を続けて2年。そして2023年4月、37年ぶりに石巻にUターン。昼間の事務職とバー経営の二足のワラジを履くオーナーYがゆるーく情報発信しています。

山小屋を続けるインフラとしてのわが家

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石巻での寝泊まりは、2013年からずっとアパートだった。最初に借りた山下のルナシー(上記写真。左は兄貴)は家賃3万円。2年して更新しようと思ったら「被災者向けに安くしてきたが元に戻したい」と大家に言われ、それならばと安いアパートに引越した(兄貴主導)。それが今の佐藤アパート。なんと家賃1万8千円。

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いろんなところに書いてるので耳タコかもしれないが、とにかく寒い。橋の上に布団敷いて寝てるようなもの。水道はすぐ凍るしトイレも汲取式だしで、店が終わって疲れてるというのにアパートに帰りたいと思わない。店のソファーベッドも硬いし、いちおう洗濯もできるしで、とりあえずアパートに帰って寝るのだが、朝はだいたい氷点下。ここに帰ったのを後悔するばかり。今の自分にそんな部屋しかないことが、あまりに悲しい。

そんなこんなで、12月頃から一連の思索を経て、中古一戸建をなんとなく探しはじめたら、その気になって「買っちゃえー」となった。中古車でも買う感覚で、家を買ってしまった。築50年を超えているが、僕や兄貴があと30年住めればよい。たぶん底値。いい買い物ができた。

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不動産がほしいとかそういうんじゃない。安らげる場所がほしいのだ。石巻に帰った時に泊まるだけならホテルでよいが朝に追い出されるのがいやだ。自分のふるさとなのにゴロゴロ寝る場所がない(実家が流された)という状況をどう変えるべきかと考え、アパートを借りることにしたのが2013年。せいぜい2、3年と思っていたら9年も借りた。もちろん最後の2年は山小屋をやるためのベース。それまで月1回程度だったのが毎週泊まるようになり、生活の中の寝泊まりの比重が高まった。安心安全に眠れる部屋があってこその山小屋経営なのだが、佐藤アパートはその基盤たりえなかった。借りた目的が途中で変化したからアパートのせいではない。店をやるインフラとして、それ相応の「家」が必要になったのだ。

いや、山小屋は関係ないだろう。この石巻に、わが家がほしかった。土地は門脇にあるけれど家を建てるまでに覚悟が決まらない。思い描いたような町の復興とはならなかった。ならば新築は諦めて中古を買えばよいと考えたとき、ものすごく楽になった。わが家というものに、肩の力が入り過ぎていたのだろう。門脇でも南浜でもないが、住めば都、住めばわが家、だ。

これから本格的な引越し作業に入る。3.11には兄貴も帰るので一緒に荷物運び。楽しみだ。この11年間、ずっと悩まされてきた問題がこれでスッキリ解決した。次なる人生再建に着手します。