怒涛のような「自民、歴史的大敗」連呼のなか、作家の小田実が逝ったと各紙がひっそり報じた。享年75歳、1932年生まれでうちの親父と同じ歳だ。
けっして愛読者ではなかったが、市民の視線を忘れず、体制を厳しく批判する姿にはシンパシーを感じていた。1945年8月14日の大阪空襲の原体験から、その後の「殺すな」という小田の一貫した思想を形成し、ベ平連や九条の会など市民運動を牽引した功績は計りしれない。不世出の“行動者”であった。
胃がん公表以後も筆談で作家活動を続け、病床に取材に来るマスコミに「まだ死にたくない。あと1年でもいいから生きたい」と泣き言を吐いていたが、まことに小田らしい、人間臭い最期であった。
今般の参院選で安倍政権が受けた大打撃により、憲法問題はしばらく棚上げされることだろう。しかしまた九条の危機は早晩訪れるにちがいない。そのとき僕らは、小田のような鋭い眼光で、憲法改正への不穏な動きをしっかり見定め、行動することができるだろうか。
「自民惨敗、民主躍進」ぐらいで、うかうか喜んでおれない。小田の無念をしっかり受け止めていきたい。